2009年03月07日

「納棺夫日記」 あらすじ・レビュー

主演の本木雅弘さんがこの本を読んで「おくりびと」を企画しました・・・納棺夫日記増補改訂版
「納棺夫日記」

納棺夫日記は葬儀社の社員である著者が死体を納棺することをとおして見えてきた自分の内面の変化を記したものである。1章には納棺夫にいたる経緯、2章には様々な人の死を、3章には死を受け入れたとき、について綴られている。

一部を転載します。

いつの間に横に座っていたのか、額を拭いてくれる女がいた。澄んだ大きな目に一杯に涙を溜めた彼女であった。作業が終わるまで横に座って、私の顔の汗を拭いていた。退去するとき、彼女の弟らしい喪主が両手をついて丁寧に礼を言った。その後ろに立ったままの彼女の目が、何かいっぱい語りかけているように思えてならなかった。

車にのってからも、涙を溜めた驚きの目が脳裏から離れなかった。あれだけ父に合ってくれと懇願した彼女である。きっと父を愛していたのだろうし、愛されていたのであろう。その父の死の悲しみの中、その遺体を湯潅する私を見た驚きは、察するに余りある。しかしその驚きや涙の奥に、何かがあった。私の横に寄り添うように座って汗を拭き続けた行為も、普通の次元の行為ではない。彼女の夫も親族もみんなみている中での行為である。

軽蔑や哀れみや同情など微塵もない、男と女の関係をも超えた、何かを感じた。私の全存在がありのまま認められたように思えた。そう思うと、嬉しくなった。この仕事をこのまま続けていけそうな気がした。


■Amazon購入者レビュー

◆静かな深い感動があります, 2004/11/2
98 人中、94人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By "とぷとぷ"
遺体を清め、棺に納める。その職業に就いた著者の、淡々とした語りが続いていくのですが、単なる作業ではなく言葉で言いあらわせないような、人間として生きたいのちの尊厳への畏怖のようなものを感じます。
それは、死してなお、肉体が存在する限り魂も共にあるという感覚でしょうか・・・ 人間とは何か、自分とは何か、家族とはなにか、なぜひとりひとりの命が尊いのかを、活字ではなく、行間からにじませる、すばらしい作品だと思います。目に見えない何かを感じようとされている方に是非読んでいただきたい本です。


◆「死」と向き合う仕事 映画「おくりびと」を観てから読みました, 2008/9/23
85 人中、80人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By sasabon
筆者の青木新門さんは、新聞の求人広告をみて、冠婚葬祭会社に就職され、現在は専務取締役をへて監査役を務めている方です。(文庫本の紹介より)
ご本人が書かれている「納棺夫」とは、亡くなられた方に最後のお別れの化粧を施し、永遠の旅立ちに対して、それへの衣装を着せ、故人を偲ぶために一番美しい状態へと蘇らせ、そのご遺体を棺に納めるという職業です。
第1章の「みぞれの季節」は、まさしく映画にも登場したエピソードの数々が収められています。「穢らわしい」と妻に叫ばれた挿話はこの仕事の厳しさでもありました。
筆者は元々詩人であり、若いころ文学を志しただけあって実に流麗な文章が綴られています。また、宮沢賢治の人生観やその詩にも共感しており、よく引用しています。
第2章の「人の死いろいろ」では、筆者が体験した「死者」の姿やそこでの思いが切々と綴られています。
個人的に素晴らしいと思ったのは、第3章の「ひかりといのち」でした。そこには筆者の宗教観が明確に記されています。特に浄土真宗の開祖の親鸞上人の教えと「教行信証」や「大無量寿教」の記載について詳しく解説がなされています。「歎異抄」の教えも含めて難解と思われる教義をできるだけ分かりやすい言葉で綴られているのは、この仕事を通して導かれた境地なのでしょう。
なお宗教用語に関しては、11ページに渡って筆者の注釈が掲載されています。
其の後に続けて掲載されている『納棺夫日記』を著して、も筆者の人柄を感じさせる話が沢山収録されてあり、人として立派な方だというのも理解しました。


◆日記部分はそう多くありません, 2008/11/1
20 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By デュエット
日記という表題がついておりますと、全編が納棺夫としての日記(エピソード)だと思いますよね。 
そう思って読み始めたとしたら、少々がっかりすると思います。
前半の三分の一はたしかにそうなのですが、それ以外の部分は著者の思索の変遷を辿った、仏教に近いところにある思想書です。
怖いもの見たさで読むんだったら立ち読みで十分。
やむを得ない事情で卒塔婆小町の域に入ってしまった死者たちとの触れあいが書かれています。
著者の青木さんも、これらのすさまじい体験から生と死を見つめざるを得なくなり、思索の道に入っていきました。
そもそも、納棺夫の職に就く前は青木さんは(売れない)詩人/小説家だったのです。
ですから、この納棺夫日記は文章も洗練されていて、訥々とした無骨なところはありませんでした。
宮沢賢治も多く引用されていました。
彼は浄土真宗の素地に法華宗の影響を受けた人物ですが、青木さんは宮沢賢治の詩を引用すると同時に、彼の評論もしています。
親鸞聖人についてもさかんに取り上げています。
納棺夫日記の根幹思想と思いましたが、わたくしは仏教の素養がなくて、あるいは脳足りんのせいでまとめることができませんでした。
著者の青木さんは詩人ですから、詩人の素質がある宗教家、思索家には強く魂を揺さぶられるようです。


◆「命」って、「死」って, 2009/1/22
19 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By あべっち
「死」は命あるもの全てが宿命的に持っていることではあるけれど、向き合うことはほとんどない。
必要に迫られるまで・・・。
偶然葬儀社に就職し、納棺の仕事を勤めることになった作者の自問自答を、読者として追体験し、そのことが自らの死生観を考えるきっかけになりました。
人の「死」に向き合うことによって見えてきた「ひかりといのち」について書かれた文章を読むと、とても静かな気持ちになります。


◆「おくりびと」以上に感動しました。, 2009/2/4
24 人中、20人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ごまちゃん (神奈川県)
この本に出逢えて、とても幸せな気持ちになりました。読書を通じて、こんなに感激するのはもう何年ぶりのことかな?
わたしもなぜだか自分自身が今までに歩んできた、ちっぽけで情けないような人生がすべて肯定されたような、不思議な至福感に満たされました。
映画の「おくりびと」もとても良かったと思いますが、この「納棺夫日記」は、映画以上に良いですよ。第一章と、第二章には、映画に描かれていたような作者の体験エピソードが淡々と静かに述べられています。
で、特に素晴らしいなと感じたのは第三章。ここで述べられている著者の宗教観や世界観には個人的に深く共鳴しました。あまり仏教や宗教の基礎的な知識のない方にとっては、少し難しい専門用語も出てくるので、いささか解りにくい部分があるかも。でも、じっくり読めば、とても深いものがあると思います。

主演の本木雅弘さんがこの本を読んで「おくりびと」を企画しました・・・納棺夫日記増補改訂版
posted by おくりびと【納棺夫】 at 14:02 | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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